新生DREAM

The day after(あの日から)

DREAM de お題

須堂さくら 作

『ねぇ、お父さん、あそこにいるのって……』
『何もいないが、どうしたんだい?』
『うん、見覚えのある女の子がいたような気がしたんだけど』
『見覚えのある女の子?』
『そう。昔に会ったことがあるような、そんな気がする子がいたの』

「それじゃあ、伯母さん、茜さん、行ってきます」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
 パタパタと小走りに街のほうへ向かう彼女を見るのは、もはや習慣のようになっていた。
 伯母であるリアが帰ってきてから、自然と待ち合わせ場所は丘の上に移動した。すぐ行ってあげなさいという、伯母の言葉に、けれど彼女は申し訳ないからと、ギリギリまで店で働く。それでいつも、走って行くことになるのである。
「あたしがいるからいいって言ってるんだけどなー」
 茜がくすりと笑って言う。
「ホントにね。…それにしてもあの子がいつの間にか彼氏なんてこさえちゃってねぇ」
「何々?リアさんももう一花咲かせたくなった?」
「何言ってるのよ、もう。私は旦那さん一筋でいくのよ」
「あぁ、じゃあ、若い頃を思い出すとか?」
「そうねぇ、昔は私もあんな風に…。って、何言わせるの」
 顔を赤くしたリアを、けらけらと笑って、茜は満足そうに若菜の消えたほうを見た。
「でも、ほんとに良かった」
「なあに?何の話?」
「何でもー?さ、仕事しなくちゃねー」

「お待たせしました」
「いいえ」
 いつも、彼は先に来ていて、若菜を見つけて微笑んでくれる。
 それが嬉しくって、つい遅く行ってしまうのだなんて、言えはしないけれど。
「今日は、どこに行くんですか?」
「えぇ、とっても綺麗な秋桜が咲くところがあるんだそうです。紅葉君に教えていただいたので、行ってみませんか?」
 そうですね、と笑う彼に微笑んで、若菜はお弁当を広げた。
 この頃は、この場所で昼食を取った後、辺りを二人で歩いて若菜の家で夕食をとる、というパターンになっている。
 その日もそうやって彼女の家へ帰れば、リアは電話の最中だった。
「えぇ!?…うん、うん。分かったわ、明日ね。…うん、また明日」
 ガチャンと受話器を置いて、はぁ、と溜め息をつく。
「何かあるんですか?」
「あぁ、お帰りなさい。…ちょっと時雨君にお願いがあるんだけど」
「…何ですか?」
「あのね、明日義父がこっちに来るんですって、それで可愛い孫の彼氏とやらを是非見てみたいから、連れてきてくれないかって言ってるんだけど」
「来るんですか?お祖父ちゃんが?」
 リアの言葉に若菜は驚いて聞き返した。
 苦笑して彼女は頷く。
「そうなのよ、突然で悪いんだけど」
「…構いません」
「本当?良かった。…じゃあ、明日の九時頃に来てちょうだいね」
 リアはにっこりと笑う。
「それじゃ、夕食にしましょうかね」

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