須堂さくら 作
男は無表情に引き金を引く。
あっけない、人生の幕切れ。
ごろりと転がった屍は、急速に熱を失う。
見下ろしながら、嘆息した。
血に染まっているのは、死者だけではないと知っている。
「…会いに来てもかまいませんか」
「え?」
突然現れた男の意味の分からない言葉に、若菜は固まった。
「お、おい時雨っ…」
「飛鳥君!」
男の後ろに現れて、慌てたように言う幼馴染に、若菜はぱっと視線をずらす。
その間も、男の視線は、彼女をじっと動かない。
「…あの、この人、飛鳥君の知り合いですか?」
「あぁ、時雨って言って、ちょっとした知り合いなんだけど…おい?」
動かない彼を、覗き込むように飛鳥は見るが、視線は交わらない。
「時雨、さん…ですか」
視線を戻すと、やっぱり彼はじっとこちらを見ていて、その視線に耐えられなくて俯く。
「…嫌、ですか」
「いえ、その…どういう、意味…」
「…興味があるんです」
「えっ?あの、でも…」
若菜は困ったように言って、ふと、浮かんだ考えに顔を上げる。
「…どこかで、お会いしましたか?」
「……いいえ」
「あの、初対面、ですよね」
「…おそらくは」
「あの…突然そんなことを言われても…困るん、ですけど」
「…困りますか」
じっと見つめる目はそのまま、何の感情も混ざらないようで、若菜はそれ以上何も言えなくなる。
困惑して見つめる瞳と、感情の見えない瞳をほんの少し焦ったように見て、それからはっとしたように飛鳥は時雨を引き剥がした。
「しっ、時雨、とりあえず今日は帰るぞ!悪いな若菜、また来る」
「あぁ、はい。えっと…」
「…また来ます」
「え…」
そのまま時雨は店を出る。
残された飛鳥が、申し訳無いように囁いた。
「あいつ、本屋来たことないって言うんで連れてきたんだ。そしたら何か、あんなんでさ、悪かったな」
「あ…いえ」
「ところでお前、伯母さんは?」
「一月ほど実家のほうに戻るそうです。電話が来て」
「ふぅん、何があったんだろうな」
飛鳥はほんの少し、考える仕草をしたが、時雨が所在無げに立っているのに気付くと、慌てたようにそちらに行った。
手を振る彼に、自分も手を振り返して、若菜は店の奥に戻る。
そこに人影が近づいてきた。
「若菜ちゃん、あの人…」
「知ってるんですか?紅葉君」
「ん、多分、銃使いの人だ」
「…銃使い」
「暗殺者。仕事で、聞いた事がある。でももう辞めたって話だったけど」
「…そんな人が、どうして」
「うーん、分からないね。でも、本気みたいだった」
ボク、ちょっとだけ調べてみるね、とそう言って紅葉も店を出る。
それで客はいなくなって、若菜は一人、閉店の準備を始めた。
暗い店の奥、レジの場所に置いてある椅子に腰掛ける。
飛鳥は、しばらく前に軍に入った。時雨という名の男は、その、知り合い。
それで、紅葉の言葉が本当なら、彼は暗殺者だ。それなら。
「…軍の雇われ暗殺者…」
呟いた言葉の重さに息を呑む。
そうだとすれば、彼は相当の実力者だ。
軍に入ったときから、暗殺者としてやっていける実力。
そうでなければ、軍に入って最初の仕事で顔が知れる。
軍はそれほどの場所だ。
信じられない。
じっと見つめるその瞳は、力強くて、でも光は柔らかだったのに。
そして次の日、彼は再び店にやってきた。
はははははー、やっちゃったよv
やりたかったネタ。やりたかったネタ。
暗殺者の王道は男の子でしょう。
…実は女の子の話は書いたりしてるんだけど。
やっぱり王道攻めたいじゃん。
ヒネリ無いとか言われても攻めたいじゃん。
つーわけでパラレル。ビバ、パラレル!
サクサクいくぞっと。
(すいません作者かなり壊れてます)