真宮寺彷徨 作
俺の昼寝特等席からはアイツの部屋がよく見えて。
いつの間にか俺は、頻繁に窓から顔を出すアイツを眺めるのが習慣になっていた。
「…飛鳥君は本当にここがお気に入りですね」
「若菜…」
頭上から降ってきた声の主は、からかうような笑いを浮かべていた。俺はイヤな予感を覚えながら体を起こす。
コイツがこういう顔をする時、俺にはいい思い出なんて何1つない(断言)
こういう時はさっさと逃げるに限る。
「あー…まあ、どんな季節でも日当たり良いしなー。よく寝れるんだ」
とかなんとか当たり障りのないことを言いつつ、じりじりと後ずさる。が、時すでに遅し。
若菜は同じ分だけ近づいて俺の耳元で囁いた。
「彼女の部屋も見えますし?」
「み!見てねぇよ茜なんて!!」
思わず言い返した言葉に、俺は死ぬほど後悔した。
まあ…後になって考えて見れば、この時逃げたは逃げたで若菜は次の日も来るし、後悔したところでどっちみち俺が笑顔最恐の幼なじみのコイツに敵う方法なんてひとっっっかけらもなかったんだよな……(泣)
「私、茜さんだなんて一言も言ってませんけど…」
「ッ…ま、またはめたな……」
「飛鳥君は学習能力が足りませんね。昔から同じ方法で好きな人を自らばらしてしまうんですから」
そんな懐かしそうに目を細められても……ってか俺ってバカ?(泣)
「まぁ、正直なことは良いことだと思いますが…。私たちも楽しいですし」
「ちょっと待て。私たちってどういう…―――――」
意味だ?と言う前に若菜はおかまいなしにしゃべり出す。
人の話し聞けよ。
「茜さんを組み手にでも誘ってみてはいかがです?」
「…誰が?」
「飛鳥君が。」
「誰を?」
「茜さんを。」
「何で!?」
「……茜さん、元気がないように見えましたから」
「え…?」
アイツが…?
あらためて茜の部屋の方を見る。窓際で肘をついて、こっちを見てるのか見てないのかわからねぇ虚ろな目してて…うわ、明らかに元気ねぇ!
「と、言うわけで頑張ってください。それでは…」
そう言って若菜はさっさと宿に戻るし…。
「………ま、暇だしな」
なんて、自分の言い訳地味た独り言に少し苦笑しつつ、俺は大きく息を吸った。
~END~
2004/09/30 公開
飛鳥視点バージョン。…これっておまけか?(訊くな)
もともとはセリフのみだったものに手を加えてみました。
どうやら当時の俺の若菜のイメージはもう少し柔らかかったようで、違和感ありまくりで困りました(笑)飛鳥もしゃべり方が多少違いましたがヘタレ度変わらず。
どんなに時間が経っても「飛鳥ヘタレ」は合言葉のようです(笑)