新生DREAM

あの頃の僕ら

DREAM de お題

真宮寺彷徨 作

 "DREAM"の一員になってから半年。クラーリの村にもラワンの宿にも大分慣れた。
 仲間と一緒に依頼をこなすのも楽しいし、不満な事は今のとこない…と思う。
 ただ一つ…―――――――気になる事を除いて。

 部屋の窓からぼーっと外を見る……それはあたしの最近の日課のひとつだった。
 体を動かすのが好きなあたしだけど、こんな穏やかで静かな時間も嫌いじゃない。
 むしろ好き。
 風の音とか木の音とか聞きながらあたしはすっと目を閉じ、瞑想を始めた。
 一時の静寂。
 と、外から知った声が聞こえてきた。
「若菜―――――
 …と飛鳥。
 あたしの窓から見える大きな木。
 そこはアイツ―――――飛鳥の昼寝特等席らしいことも最近理解した。
 それを起こすのが若菜の役目だということも。
 二人は幼なじみらしい。だから…というわけでもないんだろうけど、とても仲が良くてお互いを理解しているように見えた。
「実際そうなんだろうなぁ…」
 外にいる二人をじっと見つめる。
 なにかをささやく若菜。そしてその言葉に反応したように真っ赤になる飛鳥。

 ―――――――ツキン…

 きっとあたしたちの知らない、二人の思い出を話しているんだろう。若菜は懐かしそうに目を細めている。

 ―――――――ツキン…

 二人を見ていて思う。若菜はどうかわからないけど、飛鳥は……若菜のこと―――――――

 ―――――――ツキン…!

「いっ!?…たぁ…」
 あたしは顔をしかめた。
 まただ。
 最近、どうしようもないくらい胸が痛む瞬間がある。
 なんでこんな風になるのかはよくわからない。
 一度時雨に相談したことはあるけど、
『あぁそれは……心配いりません。たいていの人が経験するものです。理由は…そのうちわかりますよ』
 と、苦笑混じりに返された。
 なんなのよ、一体…成長痛?…って、ンなワケないか。
「おーーーいッ!茜ぇーーー!」
 呼ばれて外を見ると、飛鳥があたしの方に向かってブンブンと手を振っていた。若菜はいつの間にか中に入ったらしい。
 あたしが窓からちょっと身を乗り出すと飛鳥はさらに大きな声を上げた。
「降りてこいよ!!組み手しようぜ!!」
 何を言い出すかと思えばあの男は……。
(…ま、いっか)
 さっきまでの胸の痛みもなくなったみたいだし。それに、なんだかモヤモヤしてきた気分を暴れてすっきりさせたい。
「いいわよ!こてんぱんにしてやるから覚悟しなさい!!」
 あたしはそう言って窓枠に足をかけ、勢いよく蹴った。

 あの頃のあたしがわからなかった、胸が痛くなる原因。
 今なら…ちょっとだけだけど……わかる気がする。
 でも知らないフリをするあたり、あたしもたいして成長してないわね

~END~

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2004/09/30 公開

昔書いた小説の改訂版。
改めて読むと「あの頃オレは若かった…(遠い目)」って感じでした。
最後、茜は窓から飛び降りるんですけど(←書かないとわからない辺り文章力不足)
……足とか大丈夫なんですかね?(おい)
昔の読んでてどうしようか迷ったんですが、表現的に好きだったためそのまま採用。
茜なら大丈夫だろうと高をくくることにしました。いざとなれば下の飛鳥が受けとめてくれるだろう。

ちなみにオマケなんぞも書いてみたり。
やっぱり思いつきなんで読まなかったとしても今後にはなんの差し支えもないです。
おまけ