新生DREAM

stay with me

DREAM de お題

須堂さくら 作

「…………」
 無言になってしまった彼女を、時雨は不思議そうに見つめた。
「…いえ、あの…」
 人一人を抱えてどうしてこんな所に来ることができるんだろう。
 その言葉を飲み込んで、若菜は彼の腕から降ろしてくれるように頼んだ。
「…上っても構わないんですか?」
「…多分」
 どちらでも構わない、といった風の声に苦笑する。
 どれほど前から存在していたか分からない塔。最上階のさらに上。屋上と言うべきか、屋根と言うべきか…。そんな場所に二人はいた。
 もちろん、そんな所に登る術など存在しない。普通は。
「いつも、登ったりしてるんですか?」
 立っているのはさすがに怖くて腰を降ろすと、それに気付いた彼が隣に座った。
「…いいえ」
「じゃあ…」
「…飛鳥君が、探しに行こうと言ったんです」
 つまり彼に連れ出されて、今日のためにこの場所を探してくれたということだろう。
「…ありがとうございます」
 不思議そうに彼が首を傾けるのに、笑う。
「私のために…探してくれたんでしょう?」
「…はい」
 ふ、と微笑む時雨に、彼女は僅か、体を預けた。
「…明日は…」
 目を閉じる。
「買い物に行きましょう。…今のままじゃ、あの家に住むのは大変そうですから」
 ずっと迷い続けて、先延ばしにしていたことを告げる。
「色んな物を一緒に選んで…揃えて行きましょう」
 そっと降るように視線を感じるのが何となく嬉しい。
「そして、一緒に…」
 僅かに頬が熱くなる。
「一緒に、暮らしましょう」
「…はい」
 微笑みに、光が重なった。

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2006/09/04 公開

はい。どうした。
…というわけでその後でしたー。
時期的には『おやすみ』のちょっと前というところでしょうか。
『おやすみ』が秋ちょっと過ぎって感じで書いてるつもりなので、えーと、1~2ヶ月前って感じですね。
内容に関しては…うーん、あんまり語ることもない…かな。