須堂さくら 作
しばらく歩いていると、前から小走りに近づいてくる影が見えた。
「あ…」
思わず茜が声を洩らす。
パタパタと近寄って来て、ぐいと飛鳥を引き寄せたのは時雨。
そのまま彼を座らせて腕の処置をほどいた。
呆然としている茜に、微笑みかけたのは若菜。
「茜さんの方は、何ともありませんか?」
「あ…うん。…どうして?」
微妙な質問の意味を察したのかどうか、若菜はちらりと飛鳥を見る。
「…ものすごい勢いで走っていくから、何かあったんじゃないかと思って。…何があったんですか?」
「あたしが崖から落ちちゃって…。それで…庇って、くれたの」
「…そんなばっちりのタイミングに?」
「そんなばっちりのタイミングに。よ」
茜の言葉に、若菜はふん…と考えるようにする。
それから彼女に笑った。
「でも、大事がなくて良かった…ですね?茜さん」
「えっ?……う、うん。…あ、飛鳥」
時雨に礼を言って立ち上がる飛鳥が見えて、茜は思わず呼びかける。
振り向いた彼は-腕の包帯は、先程より随分綺麗だ。当たり前だけれど-何も言わずに首を傾げた。
「あ…えっと、ありがと。…言ってなかったって思って…」
「…別に」
投げ出すように言うその頬が僅かに赤く染まる。
もちろん茜はそれに気付かない。
「何よ、せっかく感謝してるってのに…」
「だから…」
「まぁまぁ、明日には帰るんですから、早く戻りましょう?」
くすくすと笑った若菜がそう声をかける。
そのまま歩き始めた彼女を慌てて追いかける二人の後ろ、僅かに白い影が、ゆらめいて、消えた。
2004/10/09 公開
うん。何とかなったね。(何がだ)
何か続き物っぽい終わり方だけど、続かないと思うよ。
何があったかとかは、読者様の想像力で?
何て無責任な作者だ…。
まぁ、自覚はあるんだけど(あるのかよ)
直す気もないというか。
…これで食ってるわけでもないし(いやいやお前)
そしてごめんなさい小春ちゃんと紅葉くん。
あと、時雨くんも微妙に。
て言うか今回、多分時雨君が一番扱いひどいよね。
紅葉くんと小春ちゃんは出てないからまだいいけど、時雨くんいるのにセリフ皆無。
別にわざとじゃないんだよ…。
治療要員で連れてきただけだったからほら…。
…誰に言い訳してるんだ自分(ホントにな)