河崎玲 作
刹那、飛鳥は茜に押し飛ばされていた。
落ちた看板は茜のふくらはぎに直撃し、彼女の足を不自然な方向に捻り曲げていた。
「飛鳥…アンタ…怪我ない?」
茜は顔をあげて弱々しく笑いかける。
飛鳥は駆け寄って茜の上半身を抱き起こした。
「俺は怪我してねぇけど…茜が怪我してるじゃねぇか!」
茜はにこりと笑う。
「よかった、アンタに怪我がなくて…」
「そうゆう問題じゃねぇだろ!こんの…馬鹿!」
飛鳥は茜を守れなかった悔しさから思わず怒鳴ってしまう。
いつもの動きやすい服ならば対処も簡単だったろうに…
慣れないヒラヒラのスカートは動き辛く、ハイヒールを履かされていた飛鳥は茜を助けようと踏み込んだ瞬間ヒールが折れてバランスを崩してしまったのだ。
「とりあえず帰るぞ」
「ごめん、歩けない…かも」
茜は苦笑いを浮かべた。
「手ぇ貸せ」
飛鳥は茜の左腕を取ると自分の首の後ろに回し、茜をひょいと抱き上げる。
世に言う『お姫さま抱っこ』というやつだ。
「ちょっ!飛鳥ハズい!降ろして!歩くから!」
茜は真っ赤になって飛鳥から離れようと身じろぎをする。
「馬鹿言うなよ。その怪我で歩ける訳ねぇだろうが」
飛鳥はもがく茜を落とさないように抱き上げる手の力を強める。
「それに、俺を庇って怪我した罰だ。おとなしくしてろ」
その言葉に茜は反論が出来なくなる。
「それより…どうして庇ったりしたんだよ」
飛鳥の言葉に茜はう~んと考え込む。
まさか夢で見たとも言えず、適当に答えようと決める。
「飛鳥だから…かな?」
茜は疑問系で答える。
はっ?と飛鳥は聞き返す。
「どうゆう意味だ?」
飛鳥は視線を落として茜を見る。
茜の頬がほんのりと赤い。
「ったくあんま無理すんなよ?」
お前がいるから俺は希望が持てるんだから。
ぼそりと飛鳥は呟いた。
「?なんか言った?」
「別に?」
今度は飛鳥の頬が少し赤い。
飛鳥を守るためなら
お前を守るためなら
どんな犠牲もいとわない。
2005/01/23 公開
後書きという余談
さくらちゃんとかなたくんには結構好評でございました。
なんだか言わせてみたかったのですよ(笑)
というか、飛鳥の「お前がいるから希望が持てるんだから」という発言は、こっちの分岐を書いていく内に、ふっと頭に浮かんできた一説です。
あ~ラスト決まったなぁと思いつつケータイでカチカチと…(爆)
ここまで読んでいただきありがとうございました
2005.01.23.飛鳥の誕生日にて
玲