新生DREAM

鼓動が限界

DREAM de お題

河崎玲 作

 依頼を受けて六人は宿を出た。
 今回の依頼は少し遠くに行くために途中野宿をする羽目になった。
 洞窟の中に猛獣が居ない事を確認すると一向は此処を今日の野営ポイントに決めた。
 そうと決まれば次は夕食の準備や寝床の準備などの役割分担をし始めた。
 若菜と小春が夕食の準備をすると言い、紅葉と時雨が寝床を準備するといった。
 残った二人、飛鳥と茜は火を起こす為に薪拾いに出かける事になった。
 この辺りは野生の動物や猛獣も少なく、平和な森だ。
 夕暮れ時のオレンジ色の優しい光が辺りを包む。
 空を見上げて綺麗だななんて思っていたら飛鳥から声が掛かった。

「茜。さぼってんじゃねぇぞ」
「別にさぼってない。それよりほら、夕焼け、綺麗じゃない?」
 茜は薪を片手に夕焼け空を指差した。
 薄紅から淡い橙色へ、そして来い朱と紫の混ざった不思議な色合い。
 確かに、見ごたえがある。
 飛鳥は一瞬そう思うが、それとこれとは話が別だ。
 あまり遅くなると仲間が心配するだろうし、かと言って量が少ないと文句を言われるに決まっている。飛鳥だけ。
「綺麗なのもわかんだけどよ、さっさと拾って戻ろうぜ」
「それも、そうね。」
 飛鳥の言葉に茜は薪拾いを再開した。

 どの位経っただろうか。二人の腕には結構な量の薪が抱えられていた。
「そろそろ戻ろうぜ」
「そうね」
 そういうと足元にある薪を拾おうと茜が腰を屈め、薪を拾い立ち上がった。
「いった」
 声と共に微妙な姿勢で茜が固まる。
「どうした?」
 不審に思った飛鳥が薪をその場に落とすように置き、茜に駆け寄った。
 茜は片足を付いた状態で自分の背後を窺っている。
 茜の髪が木の枝に絡みついていた。
「へーき、自分で解けるし」
「結構複雑に絡んでる、じっとしてろ」
 飛鳥は茜を腕の中におさめる様に茜の後頭部に腕を回す。
 一体どんな絡み方をしたのか、枝に複雑に絡み取られている。

 距離が近い。
 飛鳥の意外に逞しい胸板が眼前にある。髪を解くためとは言え、これではまるで抱きしめられているような感じだ。
 茜は途端に恥ずかしくなり俯く。俯いたら俯いたで飛鳥の胸板に頭が当たる。
 心臓が爆発したようにどくどくと音を立てているのが分かる。もしかしたら飛鳥に気付かれるかもと思うと尚更心臓が早く脈打つ。
「飛鳥、切っちゃっていいよ」
「馬鹿いうなよ、折角綺麗な髪なんだ、もったいない」
 さらりと恥ずかしい事を言われた気がする。
 きっと飛鳥自身気付かず無意識に言ったのだろう。普段の飛鳥ならそんな事絶対に言わない。
 複雑に絡んだ髪を解くのに必死で、本音が口を付いて出たのだ。
 ―だめ、はずい。
 顔に熱が集まるのが分かる。
 茜は無意識で飛鳥の服の裾をきゅっと握った。
「どーした?」
「まだ?」
「もうちょい」
 もう少しこのままでいろと言う事か。茜の鼓動は限界だ。
「うっし、取れた。」
 満足げに飛鳥は笑う。離れようとしたが、茜に服の裾をつかまれて動けない。
「なんだよ」
「うるさい。馬鹿飛鳥」
「はぁ?」
 俯いて茜を見ると、髪の間から見える茜の耳が赤い。
 そのとき初めて飛鳥は茜との距離感に気付き、焦った。
 近い。
 髪を解くのに必死で何も考えていなかった。
 飛鳥は口元に手をやり顔を背けた。
 距離の近さに今更自分も照れてきた。先に照れていた茜もいて尚恥ずかしい気持ちになる。
 赤くなっている茜も可愛い。
 頭の中にそんな考えが浮かび、そんな自分に飛鳥は戸惑う。
 一体なんだというのだ。
 茜は大事な仲間で、それ以上でもそれ以下でもないはずだ。
 何に何故こんなに自分の鼓動は早いのだろうか。
「茜?」
「何よ」
「お前今スゲー可愛い」
 顔を背けたままぽろりと本音が零れた。
 漸く落ち着いて来た茜の心音がまた早くなった。

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11/06/28 公開

後書き
数年ぶりに新ドリ書きました。
キャラを忘れてる!!!これはいけない!!!!