新生DREAM

あたりまえの奇跡

DREAM de お題

須堂さくら 作

 後ろから声が聞こえて、紅葉は振り返る。
「大丈夫?」
 首を傾げた彼は、そっと手を差し出した。
「あ…ありがとう、紅葉くん」
 小春はほんの少し顔を赤くして、差し出された手を握る。それからキョトンと言った。
「ねぇ、ここに何があるの?」
「…もうちょっと待ってて。あと少しで見つかると思うんだ」
「え?…うん」
 不思議そうに言った小春は、けれど小さく頷く。
 足場の安定しない道、手を引かれて、ゆっくり歩いた。

 そもそもは、昼食後の紅葉の一言だった。
「ねぇ、小春ちゃん、面白くて綺麗なものを見に行かない?」
「え?なぁに?」
「えへへ、まだ秘密だよ。どうする?」
「…うん、行く」

「あ、あった」
 紅葉が言って身を屈める。
 小春はその向かいに回り込んで地面を見つめた。
「何があるの?」
 地面にあるのはただの草のように見える。
 じっと見つめると、彼は僅か、微笑んだ。
「うん、もうちょっと…」
 言ってちらりと空を見上げる。夕暮れ時の空は、紅く輝いていた。
 紅葉は小さく頷いて再び視線を地面に戻す。
 そして生えた草を一房、ちぎった。
「見ててね」
 言って指差したのは、草をちぎり取られて残った茎。
 サァ、と風が吹いて、草を撫でていく。
「わ、すごい!」
 茎からフワフワと舞い上がったのは、透明なシャボン玉。
 一瞬で、一面が球体に包まれた。
 見上げればシャボン玉は紅く染まり、見下ろせば緑に染まる。
「これを見せに来てくれたの?」
「うん。…喜んでくれて良かった」
「うん、とっても、きれい」
 フワフワと舞うトウメイを二人でただただ見つめた。

 時間が止まって、切り取られたような風景。
 その中で、二人、微笑む。
「すごいね」
「そうだね」
「…また、来ようね」
「うん」
 二人、一緒に。

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2004/10/19 公開

…短いな。
しかもお題に合ってるのか合ってないのか…。
何であんな終わり方なのか…。
でもいいじゃん。気に入ったんだもんよ。
まぁ、内容に関してはどうでも良くって(いいのかよ)
目下の私の目標が「キスシーン」なんですが。
えぇ、未だに成功してないんです。織り込むの。
今回もちょっと挑戦しようかなと思ったんだけど。
…よく考えたらそういう雰囲気の作品を書いてないんだよねー。
わざとらしくなったら嫌だし。
ということで当分無理…?
そしてなぜそれをここで書くんだ自分。気にするな。ハマるから。