真宮寺彷徨 作
「紅葉くんって力弱そうだよね」
小春ちゃんははっきりニッコリとボクに言い放った。
「え、えーッ!?」
突然の言葉にボクは不満の声をあげる。
ボクだって一応男の子だもん。
大好きな女の子にいきなり『力弱そう』なんて言われちゃったらすっごく気になる。
「どうしてー?」
「んー…」
理由を訊くと、小春ちゃんは少し首をかしげてからボクの両腕に手をのばした。
「腕細いし…」
次に両肩に手を置いて。
「身体も華奢だし…」
そして正面からボクを見つめた。
「背も私より低いし。付け足しちゃうと色も白いし?」
最後のは力と関係あるのかな……?
「うー……」
ボクは言葉につまった。
確かに小春ちゃんの言う通り。
しかもボク自身ちょっと気にしていたことなんだ。
前はそんなこと気にしてなかったよ?だけど小春ちゃんと出会って変わったんだ。
君には"可愛い"より"かっこいい"って言ってほしいから。
それに"力がない"って思われるのは僕にとってはすごく不満。
そりゃ飛鳥クンや時雨クンには敵わないだろうけど、ボクだって剣士なんだからそれなりに力はあるつもり。
ボクにだって男の意地があるんだ!
「…確かに小春ちゃんの言う通りだけど、ボク結構力持ちさんなんだよ?」
「…………ホント?」
小春ちゃんは明らかに疑っていたけど、ボクはエッヘンと胸を張って言い切った。
「うん、賭けてもいいよ!」
「じゃあ…賭けてみる?」
「え?」
「私を片手で持ち上げて、持ち上げられたら紅葉くんの勝ち。ダメだったら私の勝ち。負けた方は勝った方のお願いをひとつだけ聞くの」
いい?と確認されて、ボクは大きく頷いた。ここで断っちゃったらオトコガスタルってやつだよね!
それに、ボクにはどうしても小春ちゃんにお願いしたいことがあるから…。
「いい?いくよ?」
小春ちゃんの腰あたりにしっかりと腕を回して確認する。ボクの腕の中にいる彼女はこくりと頷いた。
それを確認してボクはゆっくりと腕に力を込め出して…そしてぐっと腕を上に上げた。
ヒョイ。
「………」
「………」
あっさり…持ち上がった。
「うそぉ!!」
小春ちゃんは予想してなかったみたいで、すごく慌ててる。もちろんボクはウキウキ。
「ホント、だよ♪」
「ど…どーしてぇ…?」
「言ったでしょ、ボク結構力持ちだよって。それに、小春ちゃん軽いし」
ボクは嬉しくってニッコリ笑った。
そしたら小春ちゃんは急に顔を赤くして俯いちゃって…。
「も、紅葉くん!紅葉くん!もういいから…お、降ろして…?」
ボクはちょっと残念だったけど腕をゆっくりと下げた。ふぅっと息を吐きながら小春ちゃんは床に足をつけてる。
だけど、ボクは腰の手は放さなかった。
「あの…紅葉くん?」
「ねぇ小春ちゃん。ボクのお願い聞いてくれる?」
「な…―――――」
全部の言葉を聞く前にボクは小春ちゃんの口を自分の口で塞いだ。
「っ……も…みじく…?」
「小春ちゃん…―――――――」
「ッ!?」
お願いの返事を聞く前に、ボクは部屋を出た。
だって言えただけで満足だし…それに―――――小春ちゃんは絶対叶えてくれるってわかるから。
『小春ちゃん…ずーっと一緒にいてね』
「…反則だよね、お願いごとが同じ…だなんて」
一人になった部屋で小春ちゃんがそう呟いたのを、当然ボクは知らない。
~END~
2004/10/01 公開
大変だみんなー!こんなところに偽紅葉がいるぞー!!
っというわけで初!紅葉視点です。
オレは1つの小説をちまちま書くため、続きを書こうとする時必ず最初から読み返すのですが……コレはあまりのニセモノ加減に読み返すたびに不気味に笑っていました。そりゃあもうモンスターのような(笑)
紅葉白いのか黒いのかわからないし。前半が白で、後半は黒っぽいのでオレ的にはマーブル紅葉って感じです。又は灰色(グレイ)紅葉。
最後の小春のセリフはただ単に言ってほしかっただけなので、「知らないとか言いつつなに語ってんだよ」みたいなツッコミはなしな方向で。