新生DREAM

冷たい頬

DREAM de お題

河崎玲 作

 雪が降っていた…
 無常なほどにも白く、それは体温を少しずつ奪ってゆく…
「降り出しましたね」
 僕は白く曇った喫茶店の窓の外を眺めた…
 若菜さんの買出しについてきたは良いけれど、買い物をしてるうちに振り出したらしい。
 やむのを期待して喫茶店に入ったけれど一行にやむ気配は無い。
 かれこれ1時間は二人で話して過ごした。
 目の前に座っている若菜さんの視線も外へと注がれている。
 さんさんと降り注ぐ雪は地面を覆い隠していた。
「冷えると思っていたら…結構積もっていますね…」
 若菜さんの顔に苦笑いが浮かんだ…
 出来れば僕も積もって欲しくは無かったです。
 ここから宿までは歩いて30分…
 雪の事を考えると40分以上はかかる…
 一緒に居られるのは嬉しいんですけどねぇ…
「ため息なんてついて、どうかしましたか?」
 若菜さんの視線は、いつの間にか窓から僕のほうに変わっていた。
 一瞬にして視線が合う。
 僕は笑顔を若菜さんに向けた。
「なんでもないです、そろそろ帰りましょうか?」
 誘うように首を傾ける。
 若菜さんはふわりと笑う。
 天使のような微笑…
「そうですね、あまり遅くなったら皆が心配しますし」
 かたんと音を立てて椅子から立ち上がる。
 テーブルの下の袋を持つと喫茶店をあとにした。

 さくさくと雪を踏む音がする。
 遠くでは子供達が楽しそうにはしゃいでいる姿が見えた。
「子供は元気ですね…」
 若菜さんは苦笑いを浮かべて言った。
「寒さよりも楽しさが先にたつんでしょうね…
 僕は寒さよりも若菜さんへの愛しさがさきに立ちますよ?」
「そんな事はいいですから、さっさと帰りましょう」
 今度は僕が苦笑い。
 これでも緊張するからおちゃらけてるんですけどね…
 きっと若菜さんは気付いているんでしょうけど。
 さくさくと雪を踏みしめながら僕たちは帰りを急いだ。

「やっとつきましたね」
 若菜さんはそういうと上着にかかった雪を払い落とした。
 雪の中長時間歩いて肩や頭はちょっとした雪山になっている。
「若菜さん、まだついていますよ?」
 僕は若菜さんを抱き寄せると肩についた雪を綺麗に払い落とす。
 ひとつ気になって僕は手袋をはずした。
 若菜さんの頬を包み込むと、案の定冷たくなってしまっている。
 自分の手が熱いわけではない。
 それは分かっている。
「すごく冷たくなってますよ?」
 なんだか情けないような声が出てしまって情けない思いをした。
「何か暖かい飲み物でもどうですか?」
 若菜さんはにこりと微笑んだ。
「冷えているのは時雨君も同じでしょう?」
 若菜さんは今から作りますねと言って台所に向かっていった。
「やっぱり…お見通しですか?」
 実は風邪気味だったりもしていたんですけどね。
 秘密にしておきますよ。
 怒られてしまいますからね。
「それ以上に、一緒に居られるこの日常を…今は大事にしたいので…」

 時雨は若菜の後を追うように台所に向かった。
 言うまでも無いのかも知れないが…
「時雨、次の日は熱出してぶっ倒れたのよね…本当、馬鹿なんだから」

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2004/11/21 公開

はい、あとがきです、
すみません。
河﨑玲です。
実は今日はテスト期間中だったりしています。
これ、テスト中にラストだけ浮かんできたんですよ。
辻褄合わせるみたいに書いたけど…
書き足りてない(汗)
本当は時雨は若菜に手袋渡して…ってしたかったんですが、そしたら冷たい手になっちゃうし(汗)
それからもうひとつ、死にネタ浮かんでました。
でもそれは私的に却下。
結局このような形にまとまりました。
最後まで読んでいただけたら幸いです。

寒い夜に若菜の静かなる威圧におびえながら…

河﨑玲拝